アーユル チェアーを、第二のランドセルにしたい

長谷川:最初のスタート地点はアーユル チェアーを第二のランドセルにしたかったんですよ。
塩澤:ランドセル、ですか?
長谷川:ランドセルというのは、日本国内なら認知度が100%近く、ほぼ誰でも知っているものです。そして、お子さんの小学校入学の時期になると、親や祖父母が子供に買い与えるものですよね。アーユル チェアーも、そんな風に、親御さんがお子さんの健やかな成長を願いながら買い与える、スタンダードな存在にしたいという思いがありました。
塩澤:なるほど。
長谷川:そうなんですよ。なので、高機能な着圧ストッキングを発売するときに、ただ商品を売っても意味が無いと思ったんですよね。
例えば車で言うとフェラーリみたいなもので、いきなり初心者には乗りこなせないでしょ。
塩澤:たしかに。
長谷川:ただ、わが社のような家具メーカーでもない会社が子供たちの未来を変えるんだ、といっても説得力に欠けると思って、コイズミさんやイトーキさんなど、子供の学習机業界のトップシェア企業にも、一緒にこのプロジェクトをやりませんかとお声掛けさせていただいたんです。
塩澤:でも、競合している企業同士が協力するなんて、あまり無いですよね?
長谷川:たしかに、説得には時間がかかりました。でも、例えて言うなら、トヨタと日産が六輪の車を同時に発売するようなもので、これからの子供のイスの進む道みたいなものを示したいと思ったんです。だからこそ、業界の1位・2位のトップ企業も一緒になって、それぞれの特徴を出したデザインでアーユル チェアーを作って、合同で記者発表を行って世に送り出したんです。
塩澤:結局は4社合同で発売されたんでしたっけ?
長谷川:そうです。イトーキさん、コイズミさん、バルス(フランフラン)さん、トレインの4社で同時に発売しました。わが社のアーユル チェアーの最初のモデルはカッシーナさんとのコラボだったんですが、カッシーナの武藤社長は僕の大学の先輩だったんです。とても良くしてくれた方で、アーユル チェアーの話をしたら、それは面白い、ぜひカッシーナで最初にやりたいって言ってくれたんですよ。
塩澤:それは嬉しいですね。
長谷川:実は、カッシーナモデルは発売の1年ほど前にほぼ出来てたんですよ。でも、トップシェア企業と一緒になってアーユル チェアーを世に出したい、という思いがあって、結局、イトーキさんやコイズミさんを説得して商品化するまでの間、1年ほど発売を待っていたわけです。
塩澤:大変ご苦労されたんじゃないですか?
長谷川:子供産業といわれる分野は、全体で11兆円ほどの市場があるんですが、子供の学習机やイスはそのうち700億円、全体の1%しかないんです。なので、最初は乗り気じゃなかった両社の方々に、このままでいいんですか、一緒にマーケットを大きくしていきませんか、って働きかけて。結局、イトーキさん・コイズミさん両社を説得するのに1年、製作するのに1年半かかりました。
塩澤:そして、いよいよアーユル チェアーが日の目を見るわけですね。
長谷川:そうですね、発売の際には、4社合同の記者会見をしたんですが、たいへん注目していただいて、メディアにもたくさん取り上げられたんですよ。
塩澤:実は、僕、最初のこのカッシーナモデルを、発売当時、お店で見てるんですよね。
長谷川:それはどこでですか?東急ハンズですか?
塩澤:たしか、東急ハンズだと思います。
長谷川:そのアーユル チェアーは買われましたか?
塩澤:・・・いえ、そのときは買わなかったです・・・
すみません(笑)。
長谷川:いえいえ、そうなんです。子供用のイスを作ったのはいいんですが、子供のイスは親御さんが買うものですよね。でも、大人用が無いと親御さんは座り心地を実感出来ないわけです。だから、お子さんに買い与えることも難しいんですよね。結局、思ったようには普及しなかったんです。
塩澤:たしかに、大人が子供用のイスに座ってみてもわからないですからね。
長谷川:まず親が体感して大人を啓蒙していって、子供がある程度の年齢になったら、親がこれに座りなさいと買い与える、という風にならないと広まらないな、と思い直して、大人のイスに力を入れ始めたんです。
塩澤:そうですね。実は、うちの子も今アーユル チェアーを使っているんですが、一番最初は嫌がってたんですよ。でも、先日ボストンから友人が来た時も、ディナーでわざわざ「僕はこっちのイスに座る!」ってアーユル チェアーを持ってこようとして。自分ひとりでは運べないから僕が一緒に運んであげたんですけどね。今では、デスクでは常にアーユル チェアーを使っているんですよ。
長谷川:子供用のイスの中では、イトーキさんでもコイズミさんでも、アーユル チェアーが3万5,6千円位で、一番高価な商品になったんです。コストがかかるので、イスの座面はイトーキさんとコイズミさん2社共有だったんですよ。当時は子供用のイスって大体1万円強ぐらいでしたから、それでも高価だったんです。
塩澤:そういえば、イスって学習机の付属品扱いですね。机は色々、目玉の機能を付けたりするのに、イスに関してはただの付属品というか、特長も何もなくて・・・。体に直接触れるのは、実はイスのほうなのに。
長谷川:そうなんですよ。でも、なかなかイスの重要性って理解していただけないんですよね・・・。
塩澤:身体そのものに関わる仕事をしている人、ダンススタジオや日本のスポーツ(柔道や剣道)に関わる人なら、アーユル チェアーの良さを分かってくれる確率が高いんじゃないんですかね。
長谷川:そう思いますよね?でも、結局、ゴルフショップやスクールにおいても売れないんですよ・・・。何故ゴルフにいいのか、という説明が必要で・・・。
塩澤:僕が思うに、このアーユル チェアーは「頭で物を買う」人に支持されるんじゃないかと思うんですよ。
長谷川:どういう事ですか?
塩澤:例えば、僕は、カメラならリコー、PCはMac、車ならスバルのレガシーなんです。実は、アメリカにいた頃に気付いたんですが、Macユーザーはリコーのカメラを使っている人が多いんです。その人たちに、じゃあ車は何に乗ってる?と聞くと、なぜか「スバル」と答える人が多いんですよ。
長谷川:そうなんですか?
塩澤:ええ、本当です。おそらく、指向性が共通していて、レガシーだったら水平対向エンジンの良さを理屈で理解してわかっている人が買っているんですね。リコーのカメラもレンズの良さやシャッターの速さとか理屈で良さをわかって使っている。Macも同じ。でも、実はレガシーもMacもリコーも、感性に訴えかけてくる物なんですよ。実は頭で感性と直結していて、それを使っている事そのものが心地いいんです。
長谷川:理屈で理解している事が感性として心地いい・・・なるほど。
塩澤:たまたま僕は、問題意識として、ずっと自分の体に合うイスを探し続けていて、アーユル チェアーと出会ったときは、座ってみたときの「これだ!」という感性で入ったんです。後から、皆さんにお目にかかってその裏側を知って、理屈まで理解したんですけどね。でも、そこまでの問題意識でイスを探していないような、腰が痛いなとか疲れるなとか潜在的に思っているものの積極的にイスを探していないような人でも、「頭で物を買う」人達は、アーユル チェアーの背景の理論を知ると、ぞっこんほれ込むと思いますね。
長谷川:なるほど、そういう人がたくさんいると嬉しいんですけどね(笑)。
塩澤:思うに、右脳と左脳のバランス感覚なんじゃないでしょうか。左脳で理屈でわかっていて、それを感性の心地よさを感じる部分にフィードバックしているんです。なんで心地良いかわかっていて心地良い。それが心地良いと感じる。
長谷川:右脳と左脳、両方ですね。なるほど・・・最初、塩澤先生が東急ハンズで座ってみて・・・。
塩澤:そうです、たしか東急ハンズで、あのカラフルなやつ(初期モデル)を見てるんですよ。
長谷川:それで、ショールームいってみようかと思って、WEBで見て来られたんですか。
塩澤:そうです。そのとき、渋谷のハンズには一色しかなくって・・・。
長谷川:それで初めて弊社のショールームに来られて、最初は研究室用のものを買って頂いたんでしたっけ?
塩澤:そうです。その後、自宅用、そして子供用も2つ買ったんですよ。家で自分が使っていて、これは子供が座るべきだと思って、子供用を2つ。
長谷川:どうしてみんなそうしてくれないのかな(笑)。
塩澤:今、小さい子供がいるからいずれもう一つ確実に買いますよ(笑)。一家に5台です(笑)。

姿勢を正すということ

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